大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和39(オ)1376 判決

主 文

原判決中、上告人敗訴の部分を破棄し、右部分につき、本件を広島高等

裁判所松江支部に差し戻す。

理 由

上告代理人多田紀の上告理由第一点および第三点について。

原告(上告人)の本訴請求は、原告は訴外Dに対し本件軽二輪自動車を代金一八

万五、〇〇〇円、分割払の約定で売り渡し、これをDに引き渡したが、代金完済ま

では、物件の所有権を売主に留保しておいたものであるところ、右訴外人は、その

代金完済前にこれを被告(被上告人)に質入した。被告は、右物件の所有権が未だ

原告に留保されていることを知つてこれを質受したものでありながら、あえてこれ

を善意の第三者に売却し、もつて原告をして右物件の所有権を喪失せしめ、右物件

の時価である金一二万円相当の損害を蒙らしめた。よつて、原告は被告に対し右損

害金一二万円とこれに対する遅延損害金の支払を求めるというのである。

原判決は、原告の前記主張事実のうち、原告の受けた損害額の点を除いてこれを

認め、損害額につき、「本件割賦売買における所有権留保は、法律的には停止条件

付の所有権移転ということができる。然し事を実質的にみるならば、所有は買主に

移り、ただ売買物件により売買代金を優先的に担保させる意味を持つものというこ

とができる。したがつて、代金完済前第三者たる控訴人(被告)が右軽自動車を処

分したことにより売主たる被控訴人(原告)の蒙る損害は、担保権の毀損された場

合と同じく、処分時における自動車価額とそれによつて担保される未払代金とのい

ずれか小なるものの範囲に止まる、ということができる(右の如き場合においては、

買主が他に資産を有しているかどうかは、損害の有無および額と関係がない。)。」

と判示した上、未払代金額が二万五、六五〇円である旨を認定して、右金額をもつ

て原告が被告の本件物件の処分により蒙つた損害額である旨判示したものであるこ

- 1 -

とは判文上明らかである。

しかしながら、物件の所有者がその所有権を喪失せしめられることによつて蒙る

損害額は、物件喪失時における物件の時価であるのが原則であるから、何らかの事

情により、右損害額が減額されるべきであるならば、その十分な理由を示す必要が

あるところ、かりに原判決説示の理由が結論として損害額減額の理由に当るとして

も、原判決はそのいわゆる担保の内容を知るに足るべき原告と訴外D間の契約内容

を判示していないから、これによつては、損害額減額の理由の説示として不備とい

わざるをえない。原判決はこの点において破棄を免れず、論旨は理由がある。

よつて、その余の上告理由に対する判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、本件

を原審広島高等裁判所松江支部に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主

文のとおり判決する。裁判官山田作之助は、退官につき評議に関与しない。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!